・第一話・


ぎるぎるぱーはぎる(H)ぎ(T)る(M)ぱー(L)の四文字からなる日本のwebサイト。
埋立地でのゴミ捨てが主な活動である。

ぎる(H)が初めて骨を折ったのは17の頃である。
幼少の頃より人差し指と中指の第二間接に深く関心を示していたために、人差し指と中指の骨はめっぽう強く、奇跡的にこの二本だけは折れることはなかった。
この頃たまたま学校に遅刻しそうなのにもかかわらず壁に刺さっていた伝説のトングを引き抜いた事がきっかけで近くの楽器屋に行きギターを購入、曲ではなく同人誌を書きはじめる。
一方その頃ぎ(T)は酒におぼれ借金をわかめのように増やしていた。
彼がよく訪れていた酒場「かっぱ寿司」でいつものようにハンバーグ巻きを食べていた所、隣でのた打ち回っている人物にただならぬものを感じたぎ(T)は「大丈夫か」と声をかけた。
「俺は次のコミケのために同人誌を描いていただけだ」と答えたその男こそがぎる(H)である。
やがて二人は意気投合し一致団結。
ぎ(T)の連帯保証人でもあったぱー(L)も加わりぎるぎぱーは開設された。
路上で踊る彼らのその変な動きに人々は魅了され110番が相次いだ。
そのうわさを聞きつけたのがる(M)である。
る(M)は二人の作ったホームページのあまりの出来の悪さに「俺にやらせろ」と半ば強引に割り込んできた。
この一連の流れが「ぎるぎぱーる」が「ぎるぎるぱー」となったゆえんである。
しばらく地道な更新活動で改装を繰り返したあと、初めてのアカウント取得。
何度か「アクセス解析を使ってみないか」と話を持ちかけられたこともあったが「管理画面が複雑だ」とメンバーはそれを拒否。
乗りに乗ってきた頃、悲劇は訪れる。
ぎる(H)がストレスによりギリギリになってしまった。これにより名前を「ギリギリぎるぱー」にせざるを得なくなる。
さらにぎ(T)の破産。一時脱退の騒ぎとなり「ギリギリるぱー」へ。
またぱー(L)が「こっちのほうが売れるといわれた」と改名をしたことで名前が「吉岡」になり「ギリギリる吉岡」となる。2rdアクセスは伸び悩んだ。
る(M)はというとフォルダ中のjpgファイルを全て破壊しつくし当時付き合っていたHTMLファイルにも手をあげるなど荒れていた。メンバーの仲は最悪になり、とてもアップロードできる状態ではなくなっていた。
一時は閉鎖も考えるほどに深刻化し、検索を避けるようになった四人。
この頃ベン(部外者)は「このサウンドは俺の作りたいものではない」 と悩み始める。


・第二話・


ぎるぎるぱーといえば、かつて一年近くなんの動きもなく、チャートやサーチ、そしてhttp://、あるいはインターネット上から完全に消え去ろうとしている人一人来ないwebサイトであった。
僕は2004年の冬、失望していた。彼女に振られ、なんともドラマティックに喫茶店で水を浴びせられた日の夜だった。投げやりな気持ちでハイウェイをどこまでも腹ばいのまま進んでいた。今夜は酒におぼれたい。ポケットにはくしゃくしゃの一万円。とガリガリ君の空き袋。おかげでポケットの中はべとべとだ。行き着いた先のライブハウス「びっくりドンキー・ア・ゴーゴー」で僕はtopページへのリンクを繋げ、けだるい更新をしていたぎるぎるぱーの姿を見た。
そのやる気のないコンテンツやどうでもいい内容の数々、蹴飛ばしてしまいたくなるようなエンターページは不思議と僕の心にすっと入り込み、直後僕は猛烈な吐き気に襲われトイレでひたすらゲェゲェしていた。
今思えば、ぎるぎるぱーはまったくわけの分からない4人組だった。まるで意味のない無断転載禁止の文字や○で囲まれたRと一緒にツアーをしている最中、cssを脱ぎ捨てたぱー(L)は「お前らとはもうやっていられない」とわめきちらし周囲のネットマナーに押さえつけられ警察送りにされたし、ぎる(H)は日夜バナーを貪るように食って240×40のバナーを32×32にしてしまったし、当時ぎるぎるぱーの良心ともいえたぎ(T)すら録画したままのアニメを見るのに追われていた。そしてる(M)のみが隠しページで死体のように横たわって沈黙していた。誰もろくに更新なんてしやしなかった。る(M)にいたっては死んでいた。
そして2008年5月、る(M)が突然「縮小運営中」の文字を残してTOPページから消えてしまったのである。
誰もそのことは聞かされていなかったし、第一る(M)は死んでいたと誰もが思い込んでいた。だが違ったのだ。る(M)は隠しページで待っていた。たった一人で、来るはずのない訪問者を。しかしこれには理由があった。なんと驚いたことにこの隠しページはサーバーにあげ忘れていたのだ!これでは誰も訪れることなど出来やしない。まったくる(M)らしいエピソードである。
さて他のメンバーはというと、同盟バナーの隙間に挟まれたぎ(T)は身動きがとれず「俺はからっぽなんだ、まるでなにもない人間だ、完全にのけ者さ」とフォルダに引きこもってしばらく音信不通の状態が続いていた。
四人の心は離れつつあった。知らない間にぎる(H)は個人サイトの運営をはじめ、ぎ(T)はツイッターと二人でよろしくやっているところをパパラッチに激写され無駄にRTされまくった。
このままではぎるぎるぱーは解散してしまう、いや、もうすでに解散はすぐそこの状態ともいえた。
このときベン(部外者)はインタビューでこう語っていた。
「いまはとても自由にやれているよ。なんていうか……トム(本名ツトム)との仲もとてもいい感じだ。次のアルバムはきっと喜んでもらえると思う」